CASE STUDY

駿河精機株式会社

現実と見間違えるほどのリアルな世界に驚いた 駿河精機に聞く「NEUTRANS」の魅力

  • VRゴーグルを外しても同じリアルな作り込み
  • 機械の導入やトレーニングなど広がるVRの活用

VRといえばゲームやエンターテインメントが目立っていますが、実は仕事を効率化してくれる先端技術としても大いに活用されています。

特に今のパソコンやスマートフォンで実現できないのが、立体物を立体物のまま体験してもらえるという点です。例えば、大型設備の導入を検討している企業にプレゼンする際、相手のところに実物を持っていったり、来てもらって触ってもらうのがベストですが、手間やコストの問題が大きいです。一般的には、紙で図面を見せたり、パソコンの画面で3Dモデルを使って説明したりという落とし所が多いでしょう。

一方、VRゴーグルをかぶってもらえば、目の前に大型設備のCGを現実と同じサイズで出すことができます。横から覗き込んで側面を確認したり、しゃがんで下からのサイズ感を確かめたり。ハンドコントローラーでCGのレバーやボタンを動かして、操作感を試してもらうことも可能です。ディスプレーが平面なパソコンやスマートフォンでは難しかった、空間での直感的な体験を実現してくれるのがVRというわけです。

しかも昨今のVRムーブメントにおいて、VR機器は体験品質が大幅に向上して、価格も1桁万円台と安くなっている状況で、ビジネス上の競合がまだ気づいていないこのタイミングで「あれができたらより効率化できるのでは」と導入する企業も増えてきています。

そんな昨今のVRでコンテンツやシステム、研究開発の基盤を独自に構築する際にぜひ注目してほしいのが、Synamonの「NEUTRANS」です。

昨年4月には、駿河精機様と製造業向けVRコンテンツを共同開発し、ドイツで開催した産業見本市「HANNOVER MESSE」(ハノーバーメッセ)(※)にて展示しました。実際にNEUTRANSを導入してみて反響はどうだったのか。同社のOST企業体 ステージ事業部 事業部長の深沢直仁氏にお話を聞きました。

※ハノーバーメッセ…欧州最大規模・世界最大の産業専門展示会。毎年、世界約100ヵ国から約5,000社の出展者、20万名以上の来場者、そして約3,000名の報道関係者が訪れる。


駿河精機株式会社 OST企業体 ステージ事業部 事業部長の深沢直仁氏

VRゴーグルを外しても同じリアルな作り込み

まずは御社の企業概要を教えてください。

深沢氏:弊社は1964年に創業した、静岡県静岡市に本社を構える精密機械メーカーです。金型部品を加工する事業から始まり、様々な事業の一つとして「OST(Optical Scientific Technology)」事業、つまり光学関係の試験研究に必要な機器を開発販売する事業を発足させました。2005年には株式会社ミスミと経営統合しましたが、OST事業は駿河精機として事業を継続しています。

主力製品は何でしょうか?

深沢氏:私どもの製品は、生産設備や検査設備の一部として使用され、また装置そのものである為、普段あまり目にする機会がありません。主な製品は大きく2つあり、一つは、1ミクロン、サブミクロンという微小な位置調整ができる精密位置決め装置、もう一つは、光学計測技術を応用した様々な検査機器や装置になります。

BtoBの製造業とVRというのは一見、縁遠いようにも思われますが、そもそもどんなきっかけでVRの価値に気づかれたのでしょうか?

深沢氏:昨今、世界中の産業界で「インダストリー4.0」や「第四次産業革命」という言葉を掲げ、自動化・IT化が推進されています。私どもは精密加工技術に強みがある企業なのですが、この流れに取り残されてはいけないという危機感から、「スマート工場」に関する取り組みを始めていました。その活動の中で、VRやAIといった最新技術の情報を捉え、VRは新たな生産技術として活用できる可能性があると認識するようになりました。

Synamonの「NEUTRANS」に注目したきっかけは?

深沢氏:最初のきっかけは、ベッコフオートメーションの川野代表取締役社長からの紹介でした。ハノーバーメッセへの出展について相談させていただいた際に、Synamonさんにお引き合わせいただきました。それが2017年の年末になります。展示会までわずか4ヶ月しかありませんでしたが、超特急でSynamonの皆様に作っていただきました。その間のやりとりで強く感じたのは、Synamon武樋社長の「製造業でのVR活用を増やしていこう」という意気込みです。VRはエンターテインメント向けのイメージがまだまだ強かったので、その姿勢が特に印象的に感じられました。

昨今のVRシステムを初めて体験されたときは、どんな印象でしたか?

深沢氏:それはもう驚きました。VRはゲームやエンターテインメント向けのものという印象があって、実際に体験したことがなかった為、基本的な部分から学ばせていただきました。ゴーグルをかぶると目の前にCGの世界が現れ、向きを変えればその方向の画像が表示されるだけで実際に体験することの大切さを理解しました。
VR向けイノベーションタワー「NEUTRANS」を試したときには、まず物理現象をきちんと再現できていることに感動しました。例えばボールを投げた時にはその挙動が跳ね返りを含め非常にリアルに再現されていました。また、その場にいながら遠くのものを簡単に引き寄せ、さらに他の参加者と共有するなどVRならではの利便性を体験した際は、その可能性に非常に大きな期待を抱いたと共に、「VRの世界から抜け出せなくなるのでは?」というちょっとした危機感も抱きました。

ハノーバーメッセで展示したNEUTRANSについては、どう感じましたか?

深沢氏:ハノーバメッセ展示用に製作していただいたコンテンツは弊社の本社工場の一部分をVRで再現していただきました。その出来栄えは素晴らしく、実際にその場所で、VRゴーグルをかぶってもらい、作っていただいたVR空間とゴーグルを外し実際の現実と見比べると、まったく一緒でどっちがリアルかわからなくなるんです(笑)。一部のCADデータと写真をコンテンツ作成の参考資料としてお渡ししただけにも関わらず、機器に近付いて見るとちいさなメーカロゴまで再現されています。体験された方が意外に驚くのは、天井にある排気ダクトの断熱材のしわまで忠実に表現されていることです。VRの可能性を感じてもらえるような、誰もが驚くクオリティーのものを作っていただけたのが一番よかったと思います。

その辺、SynamonがVR開発に慣れているからこそ、ロゴや断熱材のしわなどの「細部に神は宿る」に気付けたのだと思います。ということはドイツのハノーバーメッセでも、VRゴーグルで日本にある工場をリアルに体験してもらえたということですね。

深沢氏:はい。とはいえ、実物を見てもらってないので、ハノーバーメッセで体験された方々に、そのリアルさが十分伝わっているのか疑問もありますが(笑)。普段はモデルとなった工場エリアにVRシステムが置いてあり、体験される方がVRのゴーグルをかぶると「あれっ!?どちらが現実?」と驚くくらいリアルなんです。

(笑)

深沢氏:それほどまでにこだわって作っていただけたので、社内のメンバーにもVRの新たな可能性を感じてもらえたと思います。

発注の際に特にこだわられた点は?

深沢氏:正直なところ、われわれ自身もVRがどこまでできるか理解していなかったので、Synamonさんと連携しながら制作を進めていきました。当初、コンテンツのクオリティーも「松竹梅」と3段階のレベルで提案があり、展示会まで時間がないということもあって最初は真ん中の「竹」でお願いしていたのですが、Synamonさんの尽力のおかげで、「ええっ!」と驚く「松」クラスのクオリティーで製作していただきました。
短い期間でも綿密にコミュニケーションを実施し、海外の展示会の状況も配慮した、様々なアイデアを提案いただきました。ハノーバーメッセでは、言葉の壁も大きかったのですが、体験でわかるVRならではの効果を活用し、われわれの取り組みが伝わったと思っています。現地ではVRアーティスト・せきぐちあいみさんのパフォーマンスなどもあって多くの方に集まっていただき、単純に商品を展示しただけでは実現できなかったブランドの認知を得られたと実感してます。

機械の導入やトレーニングなど広がるVRの活用

実際に導入されて、「この分野に活かせるのでは」とVRの可能性を感じたのは?

深沢氏:まずは教育や啓蒙活動ではないでしょうか。仮想空間で時間や場所の制約無く、VRの世界で一通り作業体験ができてしまうのは大きなメリットです。失敗しても設備も壊れないですし。

命を失うことなく、危険体験もできてしまうという。

深沢氏:そうですね。シミュレーションの精度が高くなれば、普段近くで見たいけど見られないところも確認ができるというのも利用価値があると思います。例えば、加工しているドリルの部分や、普段は開けられない稼働中の機械の中身などです。CADデータでも同様のデータは見ることができますが、やはり30分の1の縮尺で平面ディスプレーで眺めるのと、VRで空間で体験するのとでは感覚が全然異なります。

お話を聞いていると、実際に導入したからこそ語れる言葉の強さを感じます。

深沢氏:よくお話させていただいているのですが、いきなり大規模で導入すると大変なので、まずは実験的にできる範囲で試してみると見えてくることがあると思います。うちが先進的な取り組みをできたのは、社内で「まずはやってみよう」という空気があったのが大きかったです。

今後、製造業におけるVR活用は、どんな事例が考えられると思いますか?

深沢氏:例えば、工場のレイアウトをVRで再現して、導入する機器を置いてみてサイズ感や運用の流れを確かめるというのはニーズがあると思います。さらに言えば、現状のCADではシミュレーションすることはほとんどない配色まで考えることができる。ベルトコンベアーを使って三次元的に物を流すような工場では、平面よりVRのほうが有効だと思います。

VRゴーグルをかぶることで直感的に「これはいい」「これは直そう」がわかるという。

深沢氏:そうですね。図面を読むトレーニングを受けていないような専門家じゃない方にも、わかってもらえると思います。

御社的にはVRをはじめとする先進技術をどう活用していきたいと考えていますか?

深沢氏:日本は製造業へのデジタル技術導入に関して色々な意味で後塵を拝しているところがあると思っています。アジア企業が「とりあえずやってみる」の姿勢でどんどん新しいサービスを活用し始めているのに、何も取り組まないままだと近いうちに追いつき、追い越されるといった危機感を感じています。VRなどの先進技術は、これからも実際に活用できるのかどうかを常に検証していかなければならないと考えています。新人教育への活用や、製造造工程での新たな効率化のツールとして、どう使っていくのかも研究していく予定です。

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