
- 体験の共有を通して、一体感のある「新しい国際博覧会」を目指す
- リアル会議とVR会議の違い
- 連絡会議でのVR活用で見えたもの
2025年に開催を予定している大阪・関西万博では「People’s Living Lab(未来社会の実験場)」がコンセプトに掲げられ、デジタル技術を活用し「リアルとバーチャルを融合させた新しい国際博覧会の姿を打ち出していく」こととされています。
これを実現していくため、内閣官房 国際博覧会推進本部事務局(以下、万博事務局)では大阪・関西万博関係府省庁連絡会議(以下、連絡会議)を「実験場」とし、「新しい国際博覧会」に向けた準備を進めるため、VRを活用した会議を実施しました。
今回は、万博事務局の皆様にVR会議を検討された背景やその可能性についてお話を伺いました。
体験の共有を通して、一体感のある「新しい国際博覧会」を目指す
万博事務局の皆様
はじめに、万博事務局と連絡会議について教えてください。
万博やオリンピック等を開催する時には「特別措置法」という法律を策定するのですが、その法律に万博にむけた準備等のため、国際博覧会推進本部を設置することが規定されており、この国際博覧会推進本部の事務を行うため、2020年9月に万博事務局が発足されました。活動内容は、政府としての基本方針を取りまとめ、その内容を具体化すること、万博の機運醸成、各国への参加招請活動など、多岐にわたります。
連絡会議は、議長を国際博覧会担当大臣、構成員を関係府省庁の局長級としており、政府として取り決めた基本方針をどのように具体化していくかを検討して進めていく会議です。
ありがとうございます!内容的にVRとの関連性があまり想像できないですが、今回連絡会議にてVR活用を検討されたのはどういったきっかけでしょうか?
去年、万博の会場である大阪の夢洲(ゆめしま)を視察しました。夢洲は不自然なくらい広大な更地がある一方で、大阪湾の向こう側には大阪や兵庫の各都市がありました。ふと「数年後、この地に色々な施設が建設されるのか……」と想像したとき、ワクワクしたんです。そして「もっといろんなひとにこのワクワクを共有できればいいのにな」と思った時に、「これはVRで叶えられるのではないかな?」と思いついたのがきっかけですね。
そこに、個人の観点だけでなく、万博の基本方針における「リアルとバーチャルを融合させた新しい国際博覧会の姿を打ち出していく」という組織としての観点がマッチングしたことで、VRの活用を検討してみることにしました。VRによって「現在の夢洲を見る」という体験を関係者で共有することで、「新しい国際博覧会」 に向けた準備を加速させられるのではないかと考えたんです。
リアル会議とVR会議の違い
万博の会場予定地である夢洲のバーチャル空間
VR活用を検討する中で、数あるVRサービスから「NEUTRANS」に興味を持った背景を教えてください。
VRについては数回体験した程度の素人でしたから、まずはVRを扱っている企業や提供している様々なサービスについて見てみました。今回最も重要な要素は「現在の夢洲の様子を関係者間で共有する」体験をつくることでしたが、それらを叶えられそうなサービスはなかなかありませんでした。
そんな中で「NEUTRANS」のPVを知り、「このサービスなら叶えたいことが実現できる!」と直感的に思ったんです。あのときの興奮は今でも忘れられません(笑)。その後、経済産業省のJ-Startupに選出されたこと、総務省主催の「ICTイノベーションフォーラム2020」に導入されたことを知り、さらに興味を持ちました。
そういった背景があったのですね…!VR会議の実施に向けて準備を進める中で、苦労した点があれば教えてください。
そうですね、「リアルの会議でやっていることをVRにそのまま移行出来るわけではない」ということでしょうか。我々が普段物理空間でやっていることの多くは無意識な前提があり、例えば我々が普段行う会議の場合、資料の文字の大きさ・色味などは印刷して手元で見る前提で作成しています。しかし、VRだと解像度や空間上の距離の問題で見づらかったりと、色々とVRに最適化する必要がありました。普段リアルでやることが当たり前の我々にとっては、VRに最適化するための細やかな調整は意外と苦労しましたね。
連絡会議でのVR活用で見えたもの
ご発言される井上大臣とバーチャル空間のアバター
そういった苦労を超えて、VR会議を実施してみての感想はいかがですか?
リアルとバーチャルを融合させた新しい万博を目指す中で、正直なところ事務局としても「具体的に何をバーチャルで実現していくか」の共通認識を持てていなかったのですが、今回のVR会議を通してイメージを深めることができました。
また、連絡会議の参加者は大半が東京に在籍しており、実際の夢洲に行ったことがない人がほとんどだったので、現在の夢洲と未来の夢洲それぞれをバーチャル空間上で体感したことで、同じ理想を描いて一体感を持って準備を進められているように思います。
そして、霞が関において、国務大臣主催の会議をVRを用いて開催した、という前例を作れたことは大きいと感じています。今回のこの取組みが、各省庁においてVRを用いて何かをする際のきっかけになれば、こんなにも嬉しいことはありません。
VR会議の様子
我々としても前例づくりにご一緒できて嬉しい限りです…!今回、国務大臣主催として初となるVR会議の実施ということですが、皆さんの反応はいかがでしたか?
会議の場でも語っておられましたが、大臣は「まだまだ改善し進化させていく余地はあるが、未来の可能性の一端を体験できた」と仰っていました。1970年の大阪万博では”ワイヤレステレホン”や”動く歩道”など、今では当たり前になっている技術が当時は先端技術として発表され、当時の国民の皆さんは期待に胸を膨らませていたかと思います。今回参加者はVR技術に触れましたが、未来の社会においては、VR技術が当たり前になっていると嬉しいですね。
ありがとうございます、未来の当たり前となれるよう尽力してまいります。今後も万博開催に向けて準備を進めていくと思いますが、どのようにVRを活用してみたいですか?
個人的な思いも含みますが、VRの可能性をフルに活用した何かができればと思っています。今回は実験的に同じ場所からVR空間へのアクセスを行いましたが、「その場にいない遠隔地の人たちが同じ経験を体験できる」ことがVRの強みであるので、その強みを活かして世界中の人たちが気軽に万博に訪れて、ワクワクできるような体験を創れたら、今回の大阪・関西万博のコンセプトを体現できるのではと思っています。