CASE STUDY

KDDI株式会社

VRだからいつもの社員研修より能動的に学習できる 「NEUTRANS」が実現した未来の研修の形

  • 万人が研修を受けられる機会を実現したい
  • VRだから実現できた参加者の積極性

VRのいいところのひとつが、現実世界で再現が難しい体験を繰り返し試せる点です。現状でも安全確認やトレーニングなどさまざまなソリューションが世界中で開発されていて、現場の効率化やコストダウンを加速しています。

そうしたVRの特性に注目して、NEUTRANSを運用している1社がKDDIラーニングです。2019年3月の連結ベースで約4万2000人のKDDIグループ社員にむけた研修やイベントを企画・運営している同社は、NEUTRANSのどんな可能性に注目したのか。KDDIラーニング株式会社 取締役 兼 研修統括部長、佐藤雄一氏と、研修統括部 マネージャー、中島久江さんにお話を聞きました。


左より佐藤雄一氏、中島久江さん

万人が研修を受けられる機会を実現したい

研修というのは、どんなことをやるのでしょうか?

中島さん:色々あります。研修会場に集まってもらい講師の話を聞くというスタイルが多いですが、新入社員はまた別で、まず会社のことを知ってもらうのが目的です。基本的なビジネスマナーを学んだうえで、テクニカルセンターや映像センター、お客様センター、事務処理の部門など、自分が配属された後になかなか見られない色々な施設を回ったりします。珍しいところでは、光ファイバーの開通工事も見てもらっています。

工事の様子を見せるのは準備に手間がかかりそうです。

中島さん:そうなんです。協力会社の方にお願いして、高所作業車に乗って光ファイバーをつなぐというシチュエーションで、われわれも普段はなかなか見られません。そこまで手間をかけて研修するのも、最初に現場で色々な人が働いていてお客様を支えているというのを知っておいてほしいからです。例えば、営業に配属されたあとは契約を取るのが主な仕事になるので、実際に現場での作業を目にする機会がほとんどなくなってしまうんですね。

そうした研修をVRで再現するために、NEUTRANSに興味を持ったという?

中島さん:元々はテスト的に導入したのですが、その前に映画の「マトリックス」みたいなバーチャル世界で研修ができないかなという思いがありました。

マトリックス!?

中島さん:空間から銃が出てくるように、ホワイトボードが欲しいと考えたら出てくるようなことが実現できないかなという。そんな話をVR関連の企業の方々に話していたら、意外とみなさんから「面白いですね!」「いいですね!」という賛同をもらえたんです。

この話には真面目な理由があって、例えば脚が不自由で移動が大変な方、地方勤務のため東京に集まるのが大変な方、育児で家をあけられない方…こういった方々でも、遠隔で参加して同じ環境の研修を受けられればとてもいいですよね。

すごく分かる話で、VRなら実現できると思います。

中島さん:色々と学びがあるグループディスカッションも、まずみんなを同じ場所に集めるのが大変です。とはいえ、ビデオ通話で参加というのも、実際にやったことがある方ならわかると思いますが、1対多数になったときにその1人がなかなか会話に入ってこれない。同じバーチャル空間にいれば、そんな課題を解決できるのではないかと。

技術主導ではなく、もともと「こうしたい」という思いがあったのですね。

中島さん:そうなんです。実は私たちはVRについて機器の名前は知っていても実際に試せていなかった。いきなりの導入は無理だけれども、自分たちが知っておく意味でもまずはちょっとやってみようということで、KDDI内でVR活用を進めているビジネスインキュベーション推進部を通じて紹介してもらい、施設見学からテストしてみました。

佐藤氏:先ほども少し話が出ましたが、KDDIグループでは、毎年300人ほど入ってくる新入社員を対象に、電車などで移動して関連施設を見る研修を行っています。しかし、行って帰ってくるだけで時間もお金もかかりますし、説明する側も時間を割く必要がある。そして300人を一度に連れて行くのも不可能なので、10人単位で訪れることになります。

しかも、目当ての施設が遠隔地にあったりすると拘束時間は1、2日なのに、実際、見学に当てられるのはわずかな時間ということもあります。現地の都合で実際に動いているところが見られないことも往々にして起こる。それなら、あらかじめ動画で撮影しておいて、色々な説明を加えて自分の観点で能動的に見てもらえた方が良いのではないかと。

中島さん:そこでNEUTRANSを使い、今回は普段、施設見学でもなかなか行けない山口県にあるKDDI山口衛星通信センターを見学できるようにしようという話になりました。

VRだから実現できた参加者の積極性

コンテンツはどんな内容になりましたか?

佐藤氏:ドローンを使って衛星通信センターを空撮し、それをNEUTRANSの中で再生して、最大10人で見られるようにしたんです。現地には20機ほどのパラボラアンテナがあって、普段、山口にいっても下から見上げるしかないわけですが、それが空撮なら空からの視点でわかりやすく見られます。

現地に行っても普通はできない体験なんですね。

中島さん:そうなんです。そのため弊社の技術部門からもお客様にお見せしたいのでVRを貸してほしいというオファーが来たりします。たまたま2019年は衛星通信センターが50周年を迎えるということもあって、ドローン空撮に全面協力してもらうことができ、センターの記念式典でもVRの映像が使われました。

実際に体験した研修生の反響は?

中島さん:年齢が若いせいか、何も説明しなくても勝手に操作方法を覚えて、近くのアバターに近づいて喋るなど使いこなしていたのに驚きました。

佐藤氏:普段の研修を見ていてもわかりますが、発言するのが気恥ずかしいとか、「これを言ったらどうなるのかな」と回りを気にして黙っている人って多いんです。

わかります。緊張して喋れない(笑)

佐藤氏:それが今回NEUTRANSを体験した参加者からは、「全然遠慮しないでしゃべれそう」という話が出ていました。恥ずかしさを感じにくいというのは、今後の研修で役立ってくれそうです。

中島さん:若い方々ですと、年上の方々とディスカッションする際にどうしても気をつかって言い出せないということもありますが、VRなら相手の見た目がわからないから聞きやすいかもという意見もありました。


VR内で行われた研修の様子。アバターの特性を活かし、活発なコミュニケーションが行われた。

佐藤氏:何かを学ぶときに、自分が能動的になれると見方が変わりますよね。VRがいいのはその能動的になれるところです。今回の施設見学も「じゃあ一般的なカメラで映像を撮ればいいんじゃない?」という話も出ましたが、映像だけだと没入感が低いし、せっかくならそこに行っているような感じは出したかった。そこは2人でこだわりました。

映像を見るだけの講義って受け身になりがちで、意外と参加者が「心ここに在らず」になることもありますよね。

佐藤氏:そうなんです。本人がすごく興味があるものだったら別にいいのですが、そこをいかに惹きつけるかですね。

中島さん:実はビジネスインキュベーション推進部でも研修に使ってもらったのですが、ARシューティングゲームなども用意した中、山口のVR体験が好評だったという話も聞いております。

ゲームを超えるぐらいに惹きつける体験に仕上げられた証拠ですね。


会場側で撮影した研修の様子。初めての体験にも関わらず、スムーズに操作する受講者が多かった。

アバターだから上司や先輩に本音が言える!?

佐藤氏:最近、現場研修をやらない企業が増えてきているという話をよく聞きます。例えば製造業の新入社員研修って、昔はだいたい入社して1ヵ月ぐらいは工場などに行って現場を学んでもらうことが多かったんですが、最近はそれを実施しなくなったようです。

そうなんですね!

佐藤氏:工場側も大変だし、新入社員からも「そこに行って何を学べるのか」という意見があります。それでも経営層はちゃんと見せるべきだと言いますが、人事側としては日程やコストで連れて行くのが大変だし、連れて行った社員が現地できちんと学習しているかというと実はワイワイしてるだけということも往々にしてあります。それでも「目で見て知っておいてほしい」という思いがあるときに、こうしたVRのソリューションに繋がるのではないかと思います。

実際、NEUTRANSなら、工場の方をバーチャル空間にお招きして映像を見ながら「この機械は……」と生で説明して、質問だって受けられるわけです。

佐藤氏:そうしたニーズはこれからもっと出てくると思います。

中島さん:私たちも研修の講師を行いますが、将来的に多くの人がVRを持つようになり、自宅と自宅をつないで研修ができるなら、これは働き方改革になりますよね。通勤時間もないし、服装も自由です。元々の目的は、色々な人が公平に研修を受講できる機会を提供したいというところですから。

佐藤氏:また、われわれは研修のほかに人財育成もやっていて、カウンセリング用途にもVRが使える可能性を感じています。やはり直接顔を合わせて話すことに抵抗感がある方もいるので、アバターなのは話しやすそうです。インターネット越しに全国どこでも相談できる点もいいですね。

VRだと空間ごとカスタマイズできるので、話しやすそうな雰囲気もつくれそうです。

佐藤氏:そうなんですよ。上司や先輩に直接は言いにくい本音も、バーチャルだったらハードルが下がるかもしれない。そんな可能性に注目しつつ、今後もVRの活用を考えていければと思います。

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