CASE STUDY

大日コンサルタント株式会社

「VRで土木業界の働き方にイノベーションを」 大日コンサルタントに聞くNEUTRANSの実力

  • 「VR元年」以前からVRに取り組む建設コンサル企業
  • ビデオ会議を超えたNEUTRANSのVR会議
  • VR空間で3DCGをみんなで見ながら説明

VRゴーグルをかぶって、バーチャル空間に最大10人まで入ってその場に集まったような感覚で会議ができる──。そんなVR会議に使えるNEUTRANSを土木分野で活用している会社が、岐阜県岐阜市に本社を置く大日コンサルタントです。

一見、アナログな現場作業が伴う土木と、デジタルの最先端にあるVRはつながりが見えにくいですが、実際にお話を聞いてみると、建築前のものを知識のない人にどう説明するか、遠隔地との打ち合わせをどうするかといった、どの土木企業にも共通する課題を解決するために導入しているということが伝わってきました。早速、お話をまとめていきましょう。


左が同社の取締役副社長の市橋政浩氏。右が技術管理本部イノベーション推進グループ上席専任課長の飯田潤士氏。

「VR元年」以前からVRに取り組む建設コンサル企業

 

まず、大日コンサルタントについて教えてください。

市橋氏:われわれは昭和27年創業、今年66周年という企業で、建築にまつわる公共事業の測量や設計、コンサルティングを手がけております。建設コンサルタント業と聞いても想像しにくいかもしれませんが、ゼネコンさんが実際につくる前段階で調査や設計を行い、建設中も設計図通りに進んでいるのかという施工を管理するなど、土木に関わる全般的な工程に関わる仕事になります。

飯田氏:土木の公共工事は、設計と施工の会社を分けるのが原則なんです。というのも、施工会社が設計すると、工事の規模を最小限にしようというインセンティブが働かずに事業の規模が過大になってしまう可能性があるので、必ず分離することになっています。

なるほど。岐阜県内での競合は多いのでしょうか?

市橋氏:建設コンサルタント業として登録してる企業は50社近くあると思いますが、歴史という点では県内一番です。NEXCO(旧道路公団)さんの仕事をメインにやってきて、本社が岐阜にありながら、全国各地の北海道から沖縄まですべての高速道路に携わっているほど幅広い地域の公共事業を手がけています。

飯田氏:まだ高速道路ができていない時代から事業をスタートして、高速道路が伸びるとと共に成長してきたんです。技術的にも先行投資している企業で、一昔前にも道路設計用の三次元CAD、当時1000万円ぐらいしたシリコングラフィックスのワークステーション、ベータカムの編集システムなどを導入し、完成予想図をCGアニメーションで見せてNEXCOさんにプレゼンがわかりやすいと好評でした。

かなり早い段階からITを取り入れていたんですね。

市橋氏:はい。土木や建築の設計図って平面なので、熟練の技術者なら見るだけで高さや奥行きを感覚的に理解してくれますが、そうじゃない方は難しい。だから手書きやCGで土木パースをつくって見せたりもします。

飯田氏:われわれが接するお客様はプロだけじゃなく、住民の方などにも説明する機会が多々あります。われわれと行政さんならプロ同士なので図面だけで話ができますが、一般の方は「これどっちが上でどっちが下? この道はどっち? 上行ってるの? それとも下?」と疑問だらけという。

ああ……。それは今の時代ならVRゴーグルをかぶって、現地を体験していただいた方が早いですね。

飯田氏:まさにそうなんです。弊社でもずっと試行錯誤していて、平成12年頃からPC上にCADデータを3DCGで表示し、ゲームパッドで視点を移動しながらPCの画面で見られるようなシステムを開発しました。300件ほどの案件に活用しましたが、やはりPCの画面では大きさやサイズ感はどうしても伝わりにくい。

では昨今のVRムーブメントは、長年にわたる試行錯誤がようやく実りそうな願ったり叶ったりな状況という。

飯田氏:はい。悲願の時代がようやく来た感じです。だからサムスンが2015年12月にスマホ用VRゴーグル「Gear VR」を発売した際には、1週間後に買っていました。

えっ! それって「VR元年」と呼ばれた2016年より前でかなり早い段階ですね。

飯田氏:実はOculus Riftの製品版で予算を取っていたのですが、予想以上にRiftの値段が高くて、Gear VRにスイッチしたんです。DK1、DK2というOculus Riftの開発キットも、当時、周りの人に見せてもらったのですが、あまりピンとこなかった。でもGear VRはモバイルながらも表示の滑らかさが優れていて、今見てもそれほど遜色ないほどいい出来でした。
その後、VRで完成予想図をシミュレーションするシステムを開発して、実際の業務に導入しています。実は弊社の社屋も昨年立て替えたのですが、その際にもVRで使い勝手を確認して、図面を直したこともあります。

自社でも活用してるんですね。

市橋氏:図面見た際、建物の中心にある階段がちょっと狭いんじゃないのという話があったんです。それで実際に3DモデルでつくってみてVRでかぶってみて、これはもう少し広げた方が使い勝手がよくなるんじゃないかと。

飯田氏:それで発注を止めて再指示したんですよね。今考えたらあれが狭かったらまずかったですよね。

市橋氏:ちょうどいい感じに仕上げられました。

確かに建築物の図面と体感の差って結構ありそうな話ですね。

飯田氏:幅や高さとかって、図面じゃなかなか感覚がわからない。もちろんクライアントとの業務にも活用してまして、今は設計している橋について3Dモデルを作成し、住民の方にもかぶってみてもらっています。例えば、人物のCGモデルを橋の上において、人間何人ぐらいの横幅だと行き来しやすいか、手すりの高さを変えて身長による見え方がどう変わるか、橋本体の色が変わるとどんな印象になるか……といったことをチェックしてもらっています。

ビデオ会議を超えたNEUTRANSのVR会議

自社でもVRコンテンツを開発している状況があるのに、なぜNEUTRANSに興味を持って導入に至ったのでしょうか?

市橋氏:弊社では今年から建設だけでなくより幅広い分野を見る総合コンサルタントを目指そうという計画を立てて、イノベーション推進室を新設しました。そして、われわれの業界で何ができるのかと考えた際、働き方改革も当然あるよねというところで、ウェブ会議はいい視点だという話が出たんです。実はわれわれ自身の課題を解決するためでもありました。

といわれると?

市橋氏:先ほど全国の高速道路に携わってきたと言いましたが、今でも全国に現場があって、打ち合わせや現地調査に行く際に移動時間が非常にかかるんです。だから岐阜の拠点に居ながらにして全国との打ち合わせができるならこの上なくありがたい。

飯田氏:全員のスケジュールをグループウェアで管理してますが、その画面を眺めると「○○に出張」「××に出張」「△△に出張」と、全員が週の3分の1ぐらい、全国バラバラの場所に出張にいっていたりします。

3分の1ってだいぶ本社にいなくないですか?

市橋氏:打ち合わせして、現地を調査で見て、戻ってきて、コンサルティングして、またお客様に説明をする……という仕事を繰り返す感じです。

飯田氏:ゼネコンさんなら各現場に拠点をつくってしまいますが、コンサルではなかなかそうした会社は少ないです。現地を測量調査する場合は持ち込みの機材が多いので、どんなに遠くても車で行くことになります。

市橋氏:岐阜から九州とか、東北なんて当たり前に車で行ってますね。

おおお……。

市橋氏:それで飯田にいろいろ調べてもらって、NEUTRANSを見つけてSynamonさんにアプローチさせていただいた次第です。

飯田氏:会議に強いVRソリューションはないかとずっと探していたときに、NEUTRANSのユーザーインターフェースや機能を見てVRの特性をかなりつかんでいたので、VRへの理解度が高い会社だと直感したんです。あとはスタートアップなので開発スピードが非常に速そうとも感じました。当時の機能よりそのセンスとスピードを重視して、この会社は伸びるから一緒にやっていきたいと考えたんです。

既存のビデオ会議ではダメだったのでしょうか。

市橋氏:もちろん弊社もテレビ会議システムは入れていました。しかし、話している人と同じ場にいる人との会話は成り立つのですが、テレビ越しの人がなかなか割り込みしにくく、聞き役になりがちになってしまう。

とてもありがちな話ですね。

市橋氏:そこでNEUTRANSを使わせてもらったところ、声の聞こえ方のリアルさや、空間上で相手の顔見て話すことで誰に向けて話しているのかがすぐわかる点で、双方向で使えるいいツールだと感動しました。

飯田氏:体はCGのアバターでそれ自体はリアルじゃないのに、不思議と会話相手に思えてしまう。

市橋氏:初めはCGの顔を見ても何かちょっと会話が成り立たないかなと思っていたのですが、意外と自然と入れたんです。私が気づいてないスゴい秘密があるのかもしれないですけど、あれは衝撃的でした。

飯田氏:あとは遅延が思ったよりなかった。モバイル回線で試してもほとんど遅延がなかったのがよくできてるなと思いました。最近実装されたPDFの閲覧機能もいいですね。

バーチャル空間の中でPDFファイルを表示して、みんなでみながら話し合えるという?

飯田氏:そうですね。やっぱり設計の打ち合わせは必ず図面などの資料を見ながらやるので、PDFファイルを見られるようになったことで、かなり会議システムとしてのニーズを満たせてもらえた。バーチャル空間いっぱいに360度写真を展開できる機能とかも活用していたりします。

市橋氏:われわれは土木だけでなく都市計画にも携わっていて、実際に行かなくても現地を360度写真で見せられるのはビジネスとして利用価値が高いです。会議中に「じゃあ現場どうなってるの」って話が出た際、一度データで撮影しておけば一瞬で360度写真を見せられるというのはとてもありがたいです。

飯田氏:実は一番最初にVR会議を口で提案したときはあまりわかっていただけなかったんです。

市橋氏:私も最初は「何をするの?」という感じでしたが、動画を見せてもらったら「ここまでできてるの?」と一発で理解できた。役員会でも「よしいこう」って即断していたので、やはり将来性があるとみんな感じたのだと思います。

VR空間で3DCGをみんなで見ながら説明

しかし、土木業界はかなり保守的なイメージがありましたが、そこでVR会議という発想に至るのがスゴいです。

市橋氏:業界の動きは遅いですが、これから先を考えたときにやはり何か差別化して付加価値をつけていく必要はあります。未来に生まれる新しい世界を今から真剣に考えていかないと、業界が尻すぼみになってしまう可能性がある。だから、VR会議のような業務効率化に可能性をかけていきたいという思いです。

業界の手本というか、ロールモデルになりたいという思いでしょうか?

市橋氏:はい。

飯田氏:あとは若者にとって土木業界って、ITをあまり使わない生産性の低い業界という認識が持たれているところもある。でもそうじゃなくて、会議をバーチャル空間でやっていたり、設計の元データも3D空間をスキャンしてつくったりと、積極的に先端技術を取り入れて効率化していることを知ってほしい。

市橋氏:国でも国土交通省がICTで建築現場の生産性向上を目指す「i-Construction」という施策を2016年から掲げて、3Dでの設計を推進しています。ただ、CADでつくったその3D CGを3Dのまま見る手段が今は考えられていない。どうやってみるかといえばVRやARしかないわけで、そこは将来的に絶対に活用する日がくるわけです。

確かに。VRなら直感的にCGを手で回して確認できそうです。

市橋氏:それにPCの画面だと、大きな構造物は小さすぎてわかりにくかったりする。でもNEUTRANSのようなバーチャル空間に出してみんなで集まって説明できるようになると、お互いの意思疎通もやりやすい。われわれはそんな世界を目指しています。

飯田氏:そうですね。会議で離れた場所同士でコミュニケーションすることに加えて、同じ空間にCGモデルを出して眺めるという両方の機能が活用できるのが強みだと感じています。

これからNEUTRANSをこう活用していきたい、こう進化してほしいという思いはありますか?

飯田氏:今はエンジニア間で活用しているだけですが、弊社の拠点は東京・名古屋・大阪にもあるので、その間とのコミュニケーションにも活用していきたいです。まだVRゴーグルの台数がまだ足りなかったり、会議の参加人数が多い場合にどうなるかは検証しきれてないのですが、それが置き換えられると本当にいいです。クライアントだけでなく、社内打ち合わせでの移動も多いので。そのあとに行政さんに持っていきたいです。

市橋氏:進化でいえば、本当はアバターでも相手の表情がわかるといいですよね。顔色や声色を見ながら会議を進めるわけで、その辺が何かしらわかるようになると嬉しいです。非常に難しい話かもしれませんが。

ウェブカメラやiPhone Xでも表情を取れるわけですし、いずれはVRゴーグルにも内蔵されそうです。

飯田氏:NEUTRANSの話ではないですが、VRゴーグル自体がもっと小さく、軽くなってほしいという思いはあります。男性エンジニアなら今のサイズでも使えますが、女子には重いですし、かぶると髪も乱れがちになってしまいますし。ただ、いずれそうした問題もどこかで解決していくとは思います。

パソコンもインターネットもそうでしたが、新しいものって得てして最初は不便なところが目立ちますよね。でも業務を効率化したり、無駄な経費を減らせることがわかれば、自然と導入されていく。

飯田氏:そうですね。そのタイミングを長めに見て、多分5年以内にくるかなと思っています。NEUTRANSも細かいことを言い出せば、距離測れる機能がほしいとか、3Dモデルに注釈を加えて出力したいとかありますが、現時点でもVR会議システムとしてはかなり完成度が高いです。

市橋氏:そうしたVRのデバイスが成熟する前から積極的に取り入れていければと考えております。今後ともSynamonさんと弊社のVR活用を推し進めていきますので、ぜひご期待ください。

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