CASE STUDY

KDDI株式会社

実在する施設をバーチャル空間に完全再現 オリジナル空間構築で見えた「バーチャル」ならではの価値

  • バーチャル空間上に完全再現された「KDDI DIGITAL GATE」
  • 3D空間を配信することで生まれた、温かみのある「ツアー」
  • 「バーチャル空間ならではの価値」を見つけていく方法、そしてその活かし方

これまでの「当たり前」を根底から覆し、圧倒的な利便性をもたらす革新的なイノベーション。これをデジタル技術によって実現していくのが、近年話題の「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。
しかし、既存ビジネスに取り組みつつ、DXを推進していくというのはいざ実際に挑戦しようとすると非常に難しいもの。デジタル化まではできても、「革新的なイノベーション」をもたらすには非常に高い洞察力と、最適なテクノロジーを選び、適応させる力、そして圧倒的な機動力を要します。
これらの壁を超え、まさに門を開くように企業組織のDXを後押し、新規ビジネスを創出していくことをミッションとしているのが、国内大手電気通信事業会社であるKDDI株式会社が運営するビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」(以下 DIGITAL GATE)です。
同施設では2019年10月に、「NEUTRANS」のカスタマイズにより、東京・虎ノ門にあるDIGITAL GATEをバーチャル空間に完全再現しました。


東京・虎ノ門にある実在のDIGITAL GATEの様子


VR上に再現したバーチャル版DIGITAL GATEのスクリーンショット

 

バーチャル版DIGITAL GATEのPV

現在は、バーチャル版 DIGITAL GATEを活用したバーチャル施設体験ツアーが社内外で大きな話題となり、実務でも大きな成果を生んでいます。今回はこれらの取り組みを担当している、経営戦略本部 次世代基盤準備室 KDDI DIGITAL GATE マネージャーの芹澤尚史氏に、取り組み内容や効果、今後の展望についてバーチャル版 DIGITAL GATE内でお話を伺いました。

バーチャル空間上に完全再現された「KDDI DIGITAL GATE」


普段よく使われるというテーブルでインタビューを実施

本日はSynamonでも初の試みとなるバーチャルインタビューとなります。どうぞよろしくお願いいたします。

芹澤氏:よろしくお願いします。私としては、普段DIGITAL GATEでお客様と話す時の感覚と変わらないですけどね(笑)

ありがとうございます(笑) まずは「NEUTRANS」との出会いについて教えて下さい。芹澤さんがDIGITAL GATEを担当されるようになった頃、「NEUTRANS」はすでに導入されていたと伺いましたが、当時はどのように利用されていたんですか?

芹澤氏:DIGITAL GATEでは法人のお客様を対象にDX支援のオリエンテーション的な位置付けでDIGITAL GATEの体験ツアーを実施しています。その中で注目すべきコンテンツやテクノロジーについてもお客様に紹介しているのですが、その1つとしてSynamonさんの「NEUTRANS」を紹介していました。興味を持ったお客様には実際に体験もして頂いた上で、「未来の会議の形」について議論もしていましたね。当時は自社内で活用するというよりは、お客様に紹介するものとしての認識が強かったです。

今ではすっかりバーチャル版 DIGITAL GATEを業務の一部として活用されていますが、そもそもカスタマイズサービスを利用してバーチャル空間の作成を行ったきっかけはなんだったのでしょうか。

芹澤氏:きっかけは「CEATEC 2019」のブース出展ですね。丁度DIGITAL GATEの拠点が大阪と沖縄にもできるタイミングで、Synamonさんから「虎ノ門にあるDIGITAL GATEをバーチャル空間に再現してみないか」とご提案を頂きました。元々KDDIのブースで「NEUTRANS」は展示しようという話になっていたのですが、せっかく展示するなら「KDDIらしさ」が感じられるものの方が良いのでは、と。

ここでバーチャル版 DIGITAL GATEを作ってしまえば、新しくできる大阪、沖縄拠点でも、ヘッドクォーターであり全てが整備されている拠点である虎ノ門のDIGITAL GATEの案内が「NEUTRANS」を通して可能になるのも魅力的でした。「NEUTRANS」自体はすでに紹介する立場として知っていたので、私自身初めてこの計画を聞いたときには素直に面白そうだと感じました。この段階で、まさかここまでのクオリティの空間が完成することは全く予想できていませんでしたが…(笑)。

お褒めいただき光栄です!完成したバーチャル版 DIGITAL GATEに対して、皆様の反応はいかがでしたか?

芹澤氏:非常に好評でした!おそらく、一番感動しているのはDIGITAL GATEのメンバーだと思います。あまりにもそのまんま再現していただいたので(笑)。ここにPCがあってメンバーがいたら、普通に仕事ができそうだと感じますし、なんなら一日中居られそうな気すらします。

「CEATEC 2019」ではDIGITAL GATEの設計を担当した方がブースにいらっしゃって、照明や天井などの細部の再現度に大変感動していらっしゃいました。個人的な話ですが、私はDIGITAL GATE内の部屋の一つである「半蔵門」のガラス張りの質感に感動しました。付箋が裏側(通路側)から透けて見える感じがリアルと同じで、バーチャル空間内での説明にも違和感がありません。この再現性の高さのためか、DIGITAL GATEのメンバーも、空間のクオリティを上げるための意見を活発に出してくれました。


「半蔵門」のガラス張りの質感。付箋の文字が透けて見えるのがわかる

再現性が高ければ高いほど意見が出やすくなるというのは面白いですね。

再現性が高いので、現実との比較が容易なのだと思います。また、虎ノ門にあるDIGITAL GATE施設は「The GATE Experience」をお客様に提供することを強く意識して設計されている空間なんです。ワークショップに適した空間、開発に適した空間…このオープンスペースもそうです。これらをほぼ完璧にバーチャル空間に再現して頂いたおかげ、というのもありそうだなと思います。

再現性といえば、開発依頼段階で「コーヒーメーカーも作って欲しい」というこだわりを見せていた、とSynamonのデザイナーから聞いています。

芹澤氏:そう!そうなんですよ(笑)。入り口近くのメンバー紹介ボードや卓球台もこだわりです。これらは社員がリラックスしながら企画や開発をしている象徴なので、そのまま再現して貰いました。特にコーヒーメーカーはDIGITAL GATEの全体を見渡せる位置にあるので、働いている身としては非常に思い入れが深いんです。多分他のメンバーもそうで、自席からの風景の次に、コーヒーを淹れている間の俯瞰した風景を見ていると思います。だからここは隠れた重要スポットで、再現性にはこだわりたかった。


コーヒーメーカーとそこから見える風景

3D空間を配信することで生まれた、温かみのある「ツアー」

現在はバーチャル版 DIGITAL GATE内部の様子をビデオ会議システムでリアルタイム配信する、バーチャルツアーを実施しているとお聞きしました。よろしければその概要を教えて下さい。

芹澤氏:元々、DIGITAL GATEの取り組みは大きく三段階に分かれており、「体験ツアー」、「ワークショップ」、「スクラム開発」の順に進んでいきます。今回、新型コロナウィルスの流行に伴い緊急事態宣言が発令されたのを受け、我々はこれらの段階をすべてオンライン化することにしました。バーチャル版 DIGITAL GATEはその第一段階である「体験ツアー」のオンライン化に活用されています。KDDI社員がVR HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を被った状態でバーチャル版 DIGITAL GATEに入り、「NEUTRANS」内のビデオカメラ機能を使ってDIGITAL GATEの紹介を行うといった具合ですね。


バーチャル空間を活用した体験ツアーの流れ


複数台のカメラを活用した、バーチャル施設体験ツアーのイメージ

ということは、御社側のスタッフも、そのお客様も出社せずに実施できるということでしょうか?

芹澤氏:その通りです。これは今回の施策の重要なポイントですね。実は、当初は実際のDIGITAL GATEをカメラで撮影しながらビデオ会議システムで生中継するということもやっていたんですよ。でもそれって、DIGITAL GATEの担当者がカメラマンとして出社しなくちゃいけないじゃないですか。録画しておけばいいという意見もあったのですが、それではインタラクティブ性が失われてしまう。とはいえ、お客様のご案内の度に要請を受けてメンバーが駆り出されてしまっては困るという…。

おっしゃるとおりです…。実際に運用を始めてからはいかがですか?

芹澤氏:結果、誰も出社せずにバーチャルツアーは実現できるようになりましたし、大阪のメンバーによる虎ノ門のDIGITAL GATEの説明がVR空間を介して距離の制約を超えてできるようになりましたね。自宅からも参加できるので、移動時間がなくなったのも嬉しいです。最初はイメージが湧いてなかった人たちも、実際にやって見せたら「先進的で面白い、ぜひこれで進めよう」という話になりました。数回試すだけではなく、もう実用化できています。

それは何よりです。よろしければ、雰囲気を掴むために実際のツアーの一部を体験してみたいのですが…。

芹澤氏:もちろん大丈夫です!では半蔵門に移動しましょうか。ツアーではエンジニアの一日をまとめた動画を、このように普段開発で使う部屋内でお見せしたりしています。


空中に動画を浮かべて説明する様子

すごい!実際の部屋で見ているような感覚になりますし、開発の様子もしっかり想像できますね!

芹澤氏:その椅子で実際にコーディングが行われて…みたいな様子が想像できますよね。これは現実だとできないことなので、非常に便利だし効果的だと思います。

ビデオ会議システムなので、参加者は平面のモニター越しに空間を覗く形になりますが、反響はいかがですか?

芹澤氏:これが、お客様の反応が非常にいいんですよ。VR・3Dではないとはいえ、資料を使った画面共有のみの場合に比べて臨場感があると言って頂けました。案内をする側からしても、単純に資料をビデオ会議システムの画面共有で見せるだけだと、どうしても「紹介」に留まってしまって「ツアー」にはならない感覚があります。人工的な、冷たい感じが出てしまうんですよね。バーチャル空間内を中継すれば、身振り手振りも交えて「そこに居る感覚」を伝えられるので、温かみのある「ツアー」として成立するのだと思います。

バーチャル空間内にいても、ビデオ会議システムからお客様の音声を聞くことはできるので、お客様の質問にはバーチャル空間内で答えられるんですよ。このインタラクティブ性も非常に好評です。


身振り手振りを交えてスライドの説明をする様子

なるほど!空間に参加している感覚や、体験を共有している感覚というのは、このバーチャル空間を活用したツアーならではかもしれませんね。

芹澤氏:本当は折角の3Dなので、VR技術を使って3Dで見て頂きたいという思いはあります。その方が没入感も自由度も高いと思いますので…。ただ、今回のバーチャルツアーの取り組みを通じて、3D空間を2Dで配信するというのも十分に面白いし表現力が高い手法だと感じました。ツアー以外にも、対談のような空気感が大事なシーンに適していると思います。

何より、VR機材がなくてもいいというのはかなり大きなポイントですよね。まだ一般にはデバイスが普及してない今、入り口として良い体験になると思います。

お陰様でバーチャルツアーの取り組みは社外でも話題になり、新聞やWebメディアでも複数回取り上げて頂くほどです。今後も多くの方に体験して頂きながら、ブラッシュアップしていきたいですね。

「バーチャル空間ならではの価値」を見つけていく方法、そしてその活かし方

バーチャル版 DIGITAL GATEは空間のみでなく、機能面のカスタマイズも行われていますが、依頼にあたっての背景などお伺いできますか?

芹澤氏:付箋機能などの作成を依頼しましたね。付箋はワークショップなどのクリエイティブなワークにおいて、思考をビジュアル化するための重要なアイテムなんです。なので、DIGITAL GATEを再現するには必要なアイテムだと考え、依頼しました。


付箋機能

また、将来的にはこの空間の中で現実空間と同等のワークショップを実現したいなと考えているんです。あとは、離れた拠点のメンバーと共同作業をするのも未来の姿だと考えてます。バラバラの場所にいても、一つの空間でワークをして、サービスを作り上げるって、すごく夢があるじゃないですか。そういう未来を感じさせる機能としても必要だと思いました。

確かに夢がありますね!あと、特徴的なカスタマイズとして「ドローン機能」がありますが、こちらのお話も伺いたいです。

芹澤氏:ドローン機能は、再現性を上げる目的の付箋機能とは対象的に、バーチャルだからこそ実装したかった機能です。現実空間だったら会社でドローンなんて飛ばせないじゃないですか、人とか物とかに当たったら大変ですし…。でも、バーチャルならできるんですよね、現実空間にいるような感覚そのままに。こういった「バーチャル空間ならではの価値」を探して、伝えていくことが今後非常に重要だと思っています。ドローンはその「バーチャル空間ならではの価値」を象徴する機能ですね。「ドローン飛ばせる機能そのものがすごい便利!」っていう話ではなく(笑)


ドローンを操作する様子

現実の再現の上に、「バーチャル空間ならではの価値」が付加されていくイメージですね!

芹澤氏:そうです!本当は「現実のコピーではない全く新しいバーチャル版 DIGITAL GATE」をバーチャル空間に創りたいという気持ちもあるんですが、おそらく、それはまだ本当に人の心に響くようなものにならないと思うんです。何が「バーチャル空間ならではの価値」かわからないから、形だけ入ろうとしてなんとなくSFチックな、格好良いだけの実のない空間になってしまう。だから最初は、フィジカルなものをバーチャルに置き換える。そうすることでようやく、「バーチャル空間ならではの価値」が見えるようになる。今回のバーチャルツアーの取り組みも、実在の空間を完全再現できていたからこそ生まれた価値だと思います。

実在の空間を完全に再現できたからこそ、多くの人がその空間や技術を受け入れられたし「バーチャル空間ならではの価値」に気づけるようになった。その価値を元に、私達も次のフェーズに進めるようになったように感じます。

なんだか階段のようなイメージですね。フィジカルな空間を完全再現したバーチャル空間、そこから見えた価値、その価値を生かした取り組み…そのステップを重ねた先に、「全く新しいバーチャル版 DIGITAL GATE」がある。


空中に3Dペンで階段のイメージをメモする様子

芹澤氏:まさにそうです。そのステップの途中に、先程お話したバーチャルワークショップとかもあるイメージですね。現実を起点に、一段ずつ上がっていくというのが本当に大事で。

こういった取り組みを進めた上で、フィジカルよりも圧倒的に便利になったバーチャル版 DIGITAL GATEがメイン拠点になることだって将来的には十分にありえると思います。全国からメンバーが集まって、大体の仕事はオンラインで済ませてしまうような。…あ、でも、すでにここ数か月は大阪拠点のメンバーは実際に虎ノ門のDIGITAL GATEに来た回数よりもバーチャル版 DIGITAL GATEに来た回数の方が多いですね。

それでいうと、私自身もバーチャル版 DIGITAL GATEの方が訪問回数は多いです(笑)

芹澤氏:そうですよね!(笑) 一部ではもうメインが逆転してますね。今後も地道に活用のステップを重ねて、理想のバーチャル版 DIGITAL GATEに近づけていければと思います。

「第4のDIGITAL GATE」ですね!ぜひ実現のお手伝いをさせてください。


トップのアバター写真と同じアングル、同じ視点で撮影して頂いた現実の写真

芹澤さん、ありがとうございました!

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